漆黒の兄弟 7話 『玉狛支部②』

漆黒の兄弟 7話 【ワールドトリガー二次創作小説】 漫画

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7話 『玉狛支部②』

「えっ、望実くんはとりまるくんとクラスメイト!?しかも、向こうの世界から来たの??

客室に通された望実は、宇佐美と烏丸と歓談していた。

そこで烏丸の後押しもあり、望実は宇佐美にも自分が近界民であることを恐る恐る伝えたのだが、宇佐美は驚きこそしたものの、むしろ歓迎ムードだった。

「その、僕達のこと、こわいとかあやしいとか、思わないんですか」

「え、だって、そんな子じゃないんでしょ?とりまるくんと友達だし、迅さんが連れてきたんだし!」

望実は近界民である自分をあっさりと受け入れてくれた宇佐美と烏丸に、戸惑いながらも心から嬉しいと感じていた。

「うちの支部はね、向こうの世界に行ったことのある人も多いから、心配しなくても大丈夫だよ。それより、望実くんの向こうの世界での話を聞いてみたいな!というか、今は学校に通ってるんだよね?大変じゃない?大丈夫?」

宇佐美の世話好き、話し好きの性格が幸いして、望実はとても楽しい気持ちで話すことができていた。

しばらく時間が経った後、支部長室で話し込んでいた迅と和希が、客室に入ってきた。

「おっ、楽しそうにしてるな」

「望実…!よかった」

迅はいつもどおりの飄々とした態度を崩さず、和希は望実が宇佐美らと打ち解けている様子を見て安堵したように微笑む。

「今日はもう遅いから、2人とも泊っていけ。空き部屋はたくさんあるし、ここなら本部の目もごまかせる。宇佐美、任せたぞ」

「あいあいさー!」

「おれは支部長と、これから本部に行ってくるから。京介はそろそろ帰るか?明日は大仕事が入るから、今のうちにゆっくりしておけ」

「了解す」

そう言い残して慌ただしく外に出た迅を横目に、和希は宇佐美と烏丸にしっかりと向き直る。

「改めて、織本和希といいます。望実の兄で、向こうの世界から来ました。これからよろしくね」

「和希さんだね!アタシは宇佐美栞。何かわからないことがあれば、なんでも聞いてね!」

宇佐美と和希が朗らかに握手をする。その横で烏丸は、気になったことを訊いてみることにした。

「…ところで和希さん、迅さんや支部長と何を話してたんすか」

「イレギュラー門の原因についてちょっとね。迅さん達やボーダー本部の人たちがこれから対応してくれるから、明日中には全てがうまく収まると思うよ」

「まさか、和希さん達が原因を見つけてきてくれたんですか!?」

「ま、そんなところ。後の対処はボーダーにお任せするけどね」

さらりと言う和希に、烏丸も宇佐美も唖然としてしまう。

ボーダーの上層部が血眼になって探しているイレギュラー門の原因を、たった2人で見つけてきてしまったのだ。

元々、和希さんがすごい人だということは知っていた。

彼は校内では数年に1人の天才として有名だったし、望実や他のボーダー隊員からも評判を聞いていた。

全てを見抜くような観察眼と、目的に向かって最短で確実な道を考え出す思考力。

これは、迅さんが玉狛支部に連れてきたのも納得できる。

本部と揉める火種を作ってでも、この兄弟の能力には価値がある。

迅さんや支部長がそう判断するくらいに、この人たちはすごい人なのだ。

「本当にすごい!昨日から、本部のエンジニアの人たちが、ずっと調べてたのに原因がわからなかったのに!どうやって見つけたの?」

「…もっと話したいのは僕もなのだけれど、烏丸くんも帰る時間があるし、望実も早く休ませてやりたい。詳しい話はまた後日でもいいかな」

宇佐美がテンション高く話を聞こうとするのを、和希はやんわりと断った。

その様子を見て望実はかすかな違和感を覚えるが、そんな望実をよそに話はどんどん進んでいく。

「あ、そうだよね!2人ともお疲れだし、すぐに部屋を用意するね!」

「ありがとう、僕達も手伝うよ」

そうして慌ただしく客室を出る宇佐美に、望実は手伝おうと慌てて走っていく。

「おれはそろそろ帰らないと、弟妹が心配するんで」

烏丸が和希に一言声をかけると、和希はにこりと微笑み、親愛と感謝を込めて言葉を返す。

「そっか。烏丸くん、今日は本当にありがとう。また明日、よろしくね」

「こちらこそっす、和希さん」

君のような人が、望実の友達になってくれて、本当によかった。

玄関先で烏丸を見送りながら、和希は心からそう思った。


翌朝9時前。

和希と望実が玉狛支部のリビングへ行くと、既に何人かが集まっており、騒がしくなっていた。

いちはやく兄弟に気づいた宇佐美が声をかける。

「あっ!和希さん、望実くん!おはよう!」

明るい声をかけた宇佐美に兄弟が軽く会釈すると、周囲にいた2人も彼らに気付く。

「あんたたちが、迅が連れてきたっていう…?」

そう言って、鋭い目つきで彼らを見定めるのは、ボーダー攻撃手ランキング3位であり、玉狛第一のエースである小南桐江だ。

「おい小南、その態度はやめろ」

そんな彼女を諫めるのは、ボーダー唯一の完璧万能手であり、玉狛第一の隊長である木崎レイジであった。

和希と望実は彼らの風格に少し気圧されながらも、冷静に彼らを観察して、互いにアイコンタクトを取る。

望実は少し怖がりながらも笑顔で頷き、彼らに敵意がないことを和希に伝えると、和希は安心してにこりと笑った。

「小南さん、木崎さん、はじめまして。僕は織本和希。こちらは弟の望実です」

「はじめまして、織本望実です」

そう言って軽く会釈をする2人を見て、木崎と小南の感じた印象は「弱そう」だった。

小南が少し睨んだり、威圧的な態度を取っただけで、弟のほうはわかりやすく怯えた。

兄のほうは少ししっかりしているようだが、強者の雰囲気は感じない。

ボーダー全体が手を焼いていたイレギュラー門の原因を見つけてきた人物には、どうにも思えない。

そんな印象を感じていた木崎と小南をよそに、和希はテレビに目を移していた。

「ところで、そちらのテレビで放送されているのは…、」

リビングにあるテレビでは、イレギュラー門の原因が『ラッド』であることを伝える記者会見の様子が映し出されていた。

「お前たちが原因を見つけてくれたおかげだ。夜のうちに本部で『ラッド』を解析し、レーダーに映るようになった。9時からはボーダー隊員総出で掃討作戦を行う」

「あんたたちは、本部に知られるとまずいんでしょ。後はあたしたちに任せなさい」

想定よりも早く『ラッド』の解析が終わり、放送準備や隊員の招集までの手際の良さに和希は内心で感嘆する。

やはり、ボーダーの組織力は侮れない。

もしボーダーを敵に回してしまった場合、最も警戒すべきことはー。

思考の海に沈もうとした和希だったが、その思考は途切れることになった。

玉狛第一のもう1人のメンバー、烏丸京介が玉狛支部に来たのである。

「おつかれっす。遅くなってすいません」

「よし、そろったな」

玉狛第一の人員が全て揃ったのを確認し、木崎が作戦の確認を行う。

「今回の任務は『ラッド』の駆除だ。『ラッド』自体は戦闘能力を持たないいわゆる雑魚だが、本部が解析した結果、市内に数千もの『ラッド』がいるとわかった。宇佐美」

「あいあいさー!アタシが場所を指示するからよろしくね!」

「よし、行くぞ」

玉狛第一の3人が任務を完遂すべく、トリガーを起動し玉狛支部を出ていく。

残された和希と望実は、同じく支部にいる宇佐美と共に、オペレート画面を覗き込んだ。

「こんなにも多くの『ラッド』が潜伏していたなんてね。これだけいると、駆除するのにかなり時間がかかりそうだけれど、ボーダーの隊員は何どのくらいいるの?」

「A級が30人、B級が100人いて、そこまでが正隊員だよ。今回は訓練生のC級隊員にも参加してもらってるから、合計で500人くらいが作戦には参加してるよ!」

「500人も…!?そんなに…!」

ボーダーの組織力には何度も驚かされる。こちらの世界には人材は多いものの、トリオンを使わない文化のせいか、トリオン能力が高い人材は少ないものだと思っていたが、自分は少し玄界の戦力を過小評価していたのかもしれないなと、和希は自分の考えを上書きする。

「ところで、迅さんがいないけど、まだ本部のほうにいるのかな?」

「そう!今回の作戦指揮は迅さんが取るからね!たぶん夕方には帰ってくると思うよ」

この玉狛支部は、ボーダーの中では小さな派閥に過ぎないが、少数精鋭で本部内での発言力も大きいようだと察する。

昨晩の支部長と迅との話や、宇佐美から引き出せる情報をもとに、和希は脳内でボーダーの内部構造のパズルを組み立てる。

おそらく玉狛支部の人たちは、僕らの敵になることはないだろう。ただし、ボーダー本部は変わらず僕らの存在を許容しないと考えられる。また、玉狛支部と本部とが対立してしまうことも、三門市の防衛能力が低下することを考えると避けるべきだろう。

また、昨日迅から聞かされた、クロヴィに関する話も、かなり緊急の問題だ。

このような、クロヴィからもボーダー本部からも追われる状況下で、確実に自分たちの身を守るためには、どうするのが最善か。

宇佐美が『ラッド』掃討作戦のオペレートをしているのを横目に、和希は深い思索の海に沈んでいった。


昼過ぎになり、ボーダーの『ラッド』掃討作戦により、レーダーから『ラッド』の反応が消えた頃。

「よーし、作戦完了だ。おつかれさん!」

迅の合図で作戦が終了し、『ラッド』の残骸を持って基地に帰還していた。

和希と望実がいる玉狛支部にも、玉狛第一の面々や迅が帰ってくる。

「おつかれさまー!」

「お疲れ様です」

宇佐美が陽気に迎え入れ、和希と望実が全員分のお茶を入れる。

「宇佐美もお疲れ様。和希と望実も、本当にありがとう。2人のおかげで危機を免れたと言ってもいい。2人がボーダー隊員じゃないのが残念だ。表彰もののお手柄だぞ」

迅はお茶を運んできた望実を捕まえて、わしゃわしゃと頭を撫でながら彼らを称える。

そんな様子を微笑ましく見守りながら、和希は改めて感謝の言葉を述べた。

「こちらこそ、皆さんには感謝しています。イレギュラー門の原因を見つけても、僕達だけでは対処ができなかった。それに、僕らが本部に見つからないように配慮もしてくれて。感謝してもしきれません」

兄が頭を下げるのを見て、望実も精一杯の感謝の言葉を並べる。

「この街を守ってくれて、ありがとうございました!」

深々と頭を下げる和希と望実に、小南は尋ねる。

「でも、これからどうするのよ、あんた達。本部にずーっと隠し通すわけにもいかないでしょ?」

「玉狛から入隊してしまうのが、一番良いだろうな。うちの隊員にさえなってしまえば、本部から狙われることもない。多少のイザコザはあるだろうが…」

疑問符を浮かべる小南に、木崎は兄弟に入隊を勧め、宇佐美と烏丸もそれに頷く。

「兄さん…」

望実も期待を持って兄を見つめるが、和希の回答は否だった。

「僕達はまだ、玉狛支部に入ることはできません」

拒否を示す和希に、一同は驚愕する。

ただ、未来を見通す迅だけが、その答えに驚くことはなかった。


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