漆黒の兄弟 23話 『玉狛第一』

漆黒の兄弟23話 ワールドトリガー二次創作小説 漫画

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漆黒の兄弟 23話 『玉狛第一』

小南が師匠となった遊真と和希は、さっそく3人で訓練室へ来ていた。

「あたし感覚派だから、人に教えるのとか向いてないの。好きなトリガー選びなさい。ボコボコにしてあげるから、何で負けたか後でゆっくり考えるといいわ」

「ふむ…」

「…ホントに向いてなさそうだね、小南さん」

小南の、もはや教えることを放棄したと取られてもおかしくないような大胆な発言に、遊真も和希も苦笑いせざるを得なかった。

気を取り直して机の上を見ると、たくさんのトリガーが並べてあった。

「ふむ。見分けがつかん」

「ボーダーのトリガーは、スピード型のスコーピオン、万能型の弧月、防御重視のレイガストがあるんだよね。僕は、これまで使っていた剣に一番近い、弧月をまず試してみようかな」

疑問符を出しながらトリガーを眺める遊真を横目に、和希はトリガーをひとつ取り、さっそく換装する。

「じゃあ、和希からやるわよ。おチビ、部屋の外に行ってなさい!」

「おチビじゃないよ、空閑遊真だよ。じゃ、和希さんがんばって」

「う~ん、まぁ、がんばるはがんばるよ。たぶん負けるけど」

「なんでそんなに及び腰なのよ!」

テンション高くツッコむ小南に、和希は苦笑いしながら弧月を構える。

そして、遊真が訓練室を出たらすぐに、彼ら2人の攻防が始まったのだった。


烏丸、望実、修の組も訓練室に入り、まずは互いの実力を知るための戦闘訓練を始めていた。

今は烏丸と望実が対戦している。

拳銃型のアステロイドを使い、望実は後退しながら烏丸に弾丸を放つ。

しかし、C級の訓練用トリガーは威力も弱く設定されており、盾もなく両手での銃撃もできない望実の弾丸は、烏丸に容易に避けられ、攻撃手の間合いまで接近されてしまう。

(く…っ、ここまで接近されたら、もうどうしようもな…!)

烏丸に体を一刀両断された望実は、最後に一矢報いようとゼロ距離で弾丸を放つが、それは烏丸の腕を飛ばすにとどまった。

そして、彼らの10本勝負は、望実の全敗で終局を迎えた。

「うあぁ~!1本も取れなかったぁ!烏丸すごいね!」

「いや、望実もかなり動けてたし、ボーダーのトリガーに慣れていないだけだろ。途中何度か、やりにくそうにしてた」

「やっぱりばれちゃった?普段僕は2丁拳銃とシールドを使うから、ちょっと違和感あって」

「そうか。C級のうちは1丁しか使えないから、まずは慣れてくれ。でも、あれだけ動ければすぐにB級に上がれそうだから、それも踏まえて訓練メニューを組むか」

烏丸と望実が訓練室内で談笑していると、戦闘訓練中外に出ていた修が入室する。

「お疲れ様です。宇佐美先輩がドリンクを用意してくれていて、一旦外に出るようにと…」

「そうなの?ありがとうね、三雲くん」

「じゃあ、一旦外に出るか」

外に出ようと歩くなか、ふと望実が一人話す。

「でも、まさか烏丸に戦闘を教えてもらうなんて、思わなかったな」

「それはこっちの台詞だ」

「あはは。そうだろうねー」

近い距離で親密に話す彼らに、修は不思議に思い尋ねる。

「烏丸先輩と望実さんは、もともとお知り合いだったんですか?」

「うん。僕と烏丸は高校のクラスメイトなんだ。僕が近界民ってバレちゃう前から、ずっと仲良くしてた」

「そうだったんですね…!」

そうして外に出ると、宇佐美と和希が迎え入れる。

「おつかれさま~!」

「おつかれ。これ飲むといいよ」

差し出されたドリンクを受け取り、烏丸と望実はそろって椅子に座る。

「兄さんも、休憩中ですか?遊真と小南さんは…」

「2人は、お互いの呼び名を懸けた熱いバトルの最中だよ。小南さんの方針で、ひたすら10本勝負をすることになった」

「へぇ…、遊真はそういうの好きそうですね」

兄弟の談笑中に、烏丸がふと尋ねる。

「和希さんは、もう小南先輩と勝負はしたんですか?」

「うん。残念ながら1本も取れなかったなぁ。小南さんはすごいね。あんなに腕の良い攻撃手、向こうの世界でもそうそういないよ」

さらりと全敗宣言をする和希に、烏丸と修は少し意外な顔をする。

「やっぱり和希さんの目で見ても、小南先輩はかなり強いんすね」

「ま、僕たちはもともと、戦闘はあまり得意じゃないしね。戦うことを目的として訓練を積んできた君たちに負けるのは、むしろ当然だと思うよ」

和希がそう話すと、望実はうなずくが、その他の面々は疑問符を浮かべていた。

そんななか、宇佐美が問いかける。

「戦闘が得意じゃないって、和希さんたちは向こうの世界でどんなことをしてたの?」

「僕たちは、他国との交渉とか、潜入して情報を集めたりとか、そういう仕事をしてたんだ。僕たち2人は、ちょっと特殊だから」

和希には類まれな頭脳、望実には心を読むサイドエフェクトがある。

単純な戦闘もできないわけではないが、彼らの特性をより活かすことができるのは、そうした仕事ではない。

他国との交渉には、相手の心を読む望実のサイドエフェクトと、相手の立場や思考を完璧に計算しつくす和希の頭脳は重宝された。

潜入しての情報収集にも、彼らの能力はうってつけだった。たった1度の潜入でも、彼らの持つ能力を駆使して、通常の何倍もの情報を引き出すことができる。もし仮に見つかってしまったとしても、和希の頭脳と望実の戦闘能力をもってすれば、問題なく逃げることができる。

逃げること・隠れることに特化した彼らの戦闘スタイルは、そうした経験から生まれたものである。

「もちろん最低限の戦闘はできるけど、負けると思ったらすぐ逃げちゃうし、生きるか死ぬかの戦闘なんて、もう何年も経験してない」

「へぇ~。そういう戦い方もあるんだね!」

宇佐美が納得したように頷くと、訓練室から真っ青な顔をした小南が出てきた。

「…負けた」

続いて訓練室から出てきた遊真は、キラリと星を出しながら一言「勝った」とつぶやく。

「…小南先輩、負けたんすか?」

「なっ、負けてないわよ!

「10本勝負で、最後に1本取っただけだよ。トータル9対1」

「そうよ!あたしの方が断然上なんだからね!」

ヒートアップする小南たちの会話に、和希は少し考えこむ。

(それにしても、すごいな。僕や遊真がボーダーのトリガーに慣れていないとはいえ、ここまで圧倒できるなんて…。使い慣れたトリガーで戦ったとしても、何本とれるか…)

いや、小南だけではない。

望実を圧倒していた烏丸。以前なんとか逃げ切った風間隊。

そして何よりも脅威なのが、その兵隊の数。

改めて、ボーダーを敵に回さなくてよかったと思わずにはいられない。

次のバトルに燃える小南と遊真をよそに、和希はそんなことを考えていた。

しばらくの後、和希は時計を見て小南に声をかける。

「小南さん、せっかく指導してくれるところを恐縮だけど、少しやることがあるから、今日はもうおいとまするね。しばらくは、遊真のことを集中して見てあげてよ」

「…わかったわ。遊真、次いくわよ!」

「次はもっと勝てる気がするな」

訓練室に戻る2人を見送り、和希は部屋を出る。

残されたのは、烏丸と望実は、まるで独り言のように小さくつぶやく。

「…和希さんは、いつも忙しそうだな」

「…そうだね。きっと僕のことを守るために、今日も走ってくれているんだ」

「そういうとこ、なんか迅さんみたいだな。隠れて色々手を回すところ」

「うん。今何が起こっていて、何をしているのか。少しくらい教えてくれてもいいのにね」

望実のその言葉に、宇佐美も烏丸も深く頷いた。


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