漆黒の兄弟 19話『三輪隊③』

漆黒の兄弟19話 ワールドトリガー二次創作小説 漫画

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19話 『三輪隊③』

和希と望実が元の戦場である旧弓手駅に戻ると、遊真と迅、修と千佳、そして三輪隊狙撃手である奈良坂と古寺がそこにおり、何かを話しているようだった。

歩いてこちらに来る2人に気づいた遊真が、ニコリと笑って手を振る。

「おつかれ~。和希さん、望実」

「遊真こそお疲れ様。ボーダーの人たち強くて、大変だったんじゃない?」

軽く挨拶を交わす遊真と和希は、ハイタッチをしてお互いを称えるなか、迅も彼らを褒める。

「いや~。遊真もやっぱ強かったし、和希の采配もなかなかだったな。おれたちの味方になってくれるのが、心強いよ」

「いえいえ、そんな」

「迅さんたち玉狛支部の方々がいてくださってこその作戦です。こちらこそ、感謝しきれません」

迅の言葉に遊真はキラリと星を飛ばしながら謙遜し、和希は逆に迅を称え、感謝を述べた。

「そんなこと言って、おれたちがいなかったらいなかったで、また別の作戦を立てるんだろ?」

「まぁ、それはそうですね…」

「おぉー、さすが和希さん」

「兄さん…」

勝利を祝うような雰囲気のなか、修がおずおずと声を上げる。

「あの、和希さん。どうして狙撃手の位置がわかったんですか?」

「……!」

その一言に、一行と距離を取って本部と通信していた奈良坂と古寺も、彼らのほうに視線を向ける。

この敗北の大きな要因は、狙撃手の位置が早々に知られてしまい、無力化されてしまったことだ。

いくら強い相手でも、意識の外からの攻撃には対応することができない。

狙撃とは、相手が強い武器を持っているほど、切り札となりうる攻撃なのだ。

そのような大切な役割を全うできなかったことに責任を感じていた奈良坂と古寺は、その答えを聞くため、彼らの話に耳を傾ける。

「僕は狙撃手の戦い方も、一時期勉強したことがあってね。狙撃手が隠れやすいところや、標的を仕留めやすい高さや角度も知っているんだ」

まず考えたのは、狙撃手の移動ルートだ。

和希の考察では、彼らは遊真が『バンダー』を討伐していたところを見ていた。

しかし、実際に遊真がトリガーを起動していたところを見られていたのだとしたら、尾行などしなくても、その場で攻撃すれば良い話だ。

だとすれば、遊真がトリガーを使っていた姿は、『バンダー』の陰になって隠されていたと考えるほかない。

だから尾行をして、もう一度トリガーを使用した場面を押さえるしかなかったのだろう。

だとしたら、当時彼らのいたおおよその方角は把握できる。

その位置から、移動した遊真たちを捕捉し続けるための移動ルートを計算する。

また、旧弓手駅の付近で、高い建物はそう多くはない。

今回の戦闘において、狙撃に適した場所の条件はいくつかある。

旧弓手駅を一望できる場所。太陽が邪魔にならない方角。適切な距離があり、かつ警戒区域内でなければならない。

そうした条件に、先ほど導き出した移動ルート、そしてボーダーの狙撃手の平均的な射程を勘案すると。

「そのように考えて、いくつかのビルに絞った。あとはトリオンを使って視力を上げたら1人見つかったんだ」

「そ、そうだったんだ…」

感嘆して頷く望実に、和希は注意するように語る。

「もちろん、こんなに上手くいくことはそうそうないよ。今回は、事前情報があったというのと、ボーダーの狙撃手が優秀で、『狙撃手として理想的な位置』にいてくれたから、見つけることができたんだ。実際、もう1人の狙撃手はなかなか見つけられなかったし」

「え…?狙撃手は2人とも見つかってたんじゃないんですか!?」

「あれはブラフだよ。攻撃手の2人の連携が高度で、遊真も攻めあぐねているのが見えたから、なんとかして引き離したかったんだ。だから、もう1人の狙撃手も捕捉していると思わせただけ」

さらりとそう告げる和希に、望実も同意する。

「僕も、狙撃手のいる方角はなんとなくわかったけれど、見えていたわけじゃなかったです。ただ、それっぽいことを言ってそちらの方角に向かえば、相手は勘違いしてくれるって兄さんが…」

「ほう…。よくわからんが、さすが和希さん」

遊真が感心していると、和希は得意気な顔をして遊真を見る。

「遊真、ボーダーに狙撃手がいるって知らなかったでしょ」

「うん。相手が2人だけじゃないってことはわかったんだけど、どこに誰がいるかはね~」

「だと思った。遊真の腕なら攻撃手や銃手はうまくいなせるから、負けるとしたら不意打ちの狙撃だけだなと思って、先に抑えにいったんだよね」

「ほほう…!さすがよくわかってらっしゃる」

「そんな堂々とされてもね…」

苦笑いを浮かべる和希に、遊真はキラリと星を光らせる。

黙って話を聞いていた修には、話の内容自体は完全に理解できたわけではないが、和希がその頭脳をもって、戦場を完全にコントロールしていたことはかろうじで理解できた。

(そうか。そういう戦い方もあるのか)

修はC級での訓練を通して、自分が限りなく戦闘に向いていない人間であるということを理解していた。

攻撃手としての適性もなく、トリオンが少ないため銃や狙撃も難しい。

そんな自分が戦うための、1つのヒントを得た気がしていた。

そんななか、奈良坂と古寺が迅に声をかける。

「迅さん、自分たちは報告のために、先に本部に戻ります」

「おう、お疲れさん!」

本部に戻っていく奈良坂と古寺の後ろ姿を見ながら、迅はこれからの話を切り出す。

「三輪隊だけじゃ報告が偏るだろうし、おれも本部に行かなきゃな。メガネくんも一緒に行こう」

「あ、はい!」

「和希と望実、遊真と千佳ちゃんは、おれたちの話が終わるまでどこかで待っててくれるか?玉狛を使ってもいいよ。今なら宇佐美がいる」

「わかりました」

「じゃ、またあとで」

そう言い残して去っていった迅と修を見送ったあと、

「せっかくの迅さんのご厚意だし、玉狛にいさせてもらおうか。」

「たまこま…って?」

疑問符を浮かべた修と千佳に説明をしながら、4人は玉狛に向かって歩き始める。

もちろん、道の途中で遊真の自転車を拾うことも忘れずに。

その時、遊真は練習の成果を発揮しようとどや顔で自転車を漕いだのだが、ガシャンと倒れて和希に盛大に笑われたのだとか。


玉狛支部に到着すると、宇佐美が彼らを出迎えた。

「いらっしゃい~!また襲われたんだって?ここは安全だから、ゆっくりしていって!」

「宇佐美さん、ありがとう」

「お邪魔します」

「おっ!?かわいい女の子が増えた!」

「あ、雨取千佳です」

玄関先で挨拶を済ませると、彼らはリビングに案内され、宇佐美にも事情を話す。

「あちゃ~。遊真くんも本部に見つかっちゃったか~」

「うん。今は迅さんと、遊真の友達の三雲くんというC級の子が本部で話してくれているから、彼らがなんとかしてくれるんじゃないかな」

一通りの説明を終えると、宇佐美は困った表情をしながらも、疑問に感じたことを尋ねる。

「この前クロヴィとのことで、和希さんと望実くんが玉狛に来られるように交渉してたでしょ?なんであの時、遊真くんもやらなかったの?」

「僕たちと違って遊真は、黒トリガーを持っているからね。僕たち2人だけだったから本部は承認してたけど、黒トリガーとなれば、玉狛と本部との摩擦は大きくなる」

「なるほどね~。じゃあどうするのがいいのかな~」

う~んと悩みはじめる宇佐美に、和希は苦笑して声をかける。

「まあ、とりあえずは2人が戻ってきてからだね。でも一応、ボーダーから逃げられる準備はしておこうかな…」

「う~ん、さすがに問答無用で襲ってくるようなことはないと思うけどな~」

そうして和希と宇佐美が話しているのを遮り、遊真が小さく手を挙げる。

「あ、そのことなんだけどさ」

「どうしたの、遊真」

遊真はさらりと言い放つ。

「おれさ、近界に帰るよ」


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