みなさんは、TURF(ターフ)分析という手法を聞いたことがありますか?
これは、店頭に置く商品のラインナップを最適化するための分析手法で、多くの企業で使われている考え方です。
店頭のスペースには限りがあるけれど、たくさんのお客さんに買ってほしい。そんな願いを叶えるのがTURF分析です。
今回は、TURF分析の考え方やメリット・デメリットについて紹介していきます。
考え方

TURF (Total Unduplicated Reach and Frequency)分析は、すべての商品の組み合わせの中から、消費者へのリーチ(到達率)が最大になるような組み合わせを得ることができる手法です。
たとえば、アイスクリーム店で若年層から高年層まで幅広い顧客獲得を狙っているなかで、どのフレーバーを販売するか迷っているとします。
その場合、レーズンと紅茶のみを販売するのはナンセンスですよね。若年層が店に来なくなってしまいます。
その反面、バニラとストロベリーは全年代に人気のものですが、レーズンやオレンジなど奇をてらったアイスを食べたい人は来てくれないかもしれません。
そのような状況の中、”どのフレーバーの組み合わせが最も多くの顧客獲得を狙えるか”という観点から分析するのが、TURF分析です。
メリット・デメリット
メリット

TURF分析のメリットは、「最も多くの消費者にアプローチできる組み合わせがわかる」ということです。
通常の分析結果だと、人気上位のバニラとイチゴの2フレーバーを販売するのが良いという結果に思えそうです。
ただ画像をみると、イチゴとバニラはターゲットが被っており、抹茶を販売した方が購入”人数”は増えますよね。
このように間口を広げるための分析として、TURF分析は多くの企業で行われています。
デメリット
TURF分析のデメリットは、「必ずしも売上が最大化するとは限らない」ことと、「基本的なマーケティングの考え方と相反する」ということです。
まず、売上は”購買人数×1回当たりの購入金額”で表されます。
この分析では”購買人数”は最大化できるものの、”1回当たりの購入金額”は最大化されるとは限らないんですね。
たとえば、TURF分析だとバニラ×抹茶の組み合わせがベストという結果になりますが、バニラ×イチゴの組み合わせだと両方とも買ってくれる人が増えるかもしれません。
また、マーケティングの基本は”ターゲットを絞ること“ですが、TURF分析の考え方は”ターゲットを増やす“ことですよね。
このあたりの考え方の違いもあるので、特に初心者マーケターの方には理解しにくいかもしれません。
このように”必ずしも売上が最大化する”とは限りませんが、”1回当たりの購入金額”を増やすのが難しいと思われる場合は”購入人数を増やす”TURF分析も有効です。
設問形式
では、TURF分析を行うためにはどのような設問形式でアンケートを聴取すれば良いのでしょうか。
通常は複数回答形式で聴取を行います。以下のような感じですね。

ただ細かく分析を行いたい時などは、それぞれのフレーバーについて「とても買いたい」「やや買いたい」……「全く買いたくない」などと5段階で聴取することもあります。

多くの調査会社ではどちらの聞き方も可能なので、ぜひあなたの状況に合った聴取方法を考えてみてくださいね。
アウトプット

TURF分析のアウトプットは、こちらのようなグラフになります。
1位から5位程度まで●で組み合わせを示し、それに対応するリーチスコアを右側に表示します。
ぱっと見てどの組み合わせがどのくらい良いか、直感的に把握することができるグラフとなっています。
分析ツール使用法
TURF分析には、Sawtooth Softwareを使用します。
このソフトの使用には登録が必要です。
データを用意

TURF分析の場合は、このようなローデータを用意します。
今回は複数回答を想定しているため0と1のみのデータですが、5段階で聴取した場合は数値が1から5になるイメージです。
データを取り込むために、CSVファイルで保存しましょう。
データ取り込み

Sawtooth Softwareでログインしたら、さっそくデータを取り込みましょう。
Nameの欄は何でもいいです。後で自分がわかるようにプロジェクト名などを入れておきましょう。
Project Typeの欄は、”General”を選択して、Nextをクリックしましょう。

次はこのような画面が出てくるので、先程用意したCSVファイルをドラッグ&ドロップしましょう。

次はこのような画面が出てきますが、ここでは基本何もしなくてOKです。
ウエイトバックをしたい時は”Variables File”に、ラベルを操作したい時は”Labels File”に追加ファイルを入れましょう。
それが終わったら、”Create Project”ボタンを押して分析スタートです。
分析結果

分析スタートし、まず出てくるのは”複数回答の集計”グラフです。
こちらを見ると、イチゴが70%と高くなっていて、次いでバニラ・抹茶・レーズンが60%で横並びですね。
では次に、左上の”TURF”ボタンを押して、TURF分析結果を見てみましょう。

“TURF”ボタンを押してまず出てくるのは、FirstChoice法での分析結果です。
今回は、6つのフレーバーを2つ選んだ時のリーチ率を、上位20通りまで出しました。
この場合は、イチゴ×抹茶の組み合わせが47%でトップのようですね。

次は、Threshold法で結果を見て見ましょう。
右側のコントロールで方法を選んだり閾値を調整することができます。
こちらでは、バニラとイチゴをはじめとした8通りの組み合わせで、リーチ率が90%という結果になりました。
テストデータを適当に作りすぎました。サンプル数10の分析なんてこんなもんです(笑)
結果をダウンロード

右上のボタンを押すと、分析結果をダウンロードできます。
サマリー・個別結果・グラフの3種類で結果を確認することができますので、自分の整理しやすい方法でダウンロードしてみてくださいね。



分析方法の詳細
FirstChoice法
FirstChoice法とは、各回答者が最も買いたいと答えたものが含まれていた場合のみ、リーチしたとみなす方法です。
「とても買いたい」「やや買いたい」などの5段階で回答した場合に、各回答の重みを考慮して分析することができます。
「どれでもいいからアイスを食べたい」という人より「バニラじゃなきゃ嫌だ!」といった人の意見を重くして分析しているイメージですね。
耐久消費財など、通常1人1つしか購入しないような商品の分析に向いています。
Threshold法
Threshold法とは、各回答者が少しでも買いたいと答えたものが含まれていた場合に、リーチしたとみなす方法です。
「とても買いたい」「やや買いたい」などの5段階で聴取した場合、2つの「買いたい」は同じものとして認識されます。
通常、TURF分析と聞いて真っ先にイメージするのは、こちらではないでしょうか。
こちらは、FMCGなど1人が複数購入するような商品の分析に向いています。
おわりに
TURF分析について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
こちらは新しい分析手法ですし、考え方も特殊なためすぐには理解しづらいかもしれません。
顧客の間口を広げたい時や、商品のラインナップで困っている時などには、ぜひTURF分析でリーチ率の高い組み合わせを探ってみてはいかがでしょうか?
質問・コメントなどお待ちしています!
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
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