金曜ドラマの『インビジブル』が非常に人気を集めています。
捜査一課の刑事・志村貴文が、犯罪コーディネーターのキリコと共に凶悪犯を捕まえていくサスペンスです。
凶悪犯と共に凶悪犯を捕まえるという異色のストーリーが人気の秘密なのではないでしょうか。
そんなドラマ『インビジブル』とよく似た小説作品があることはご存知でしたでしょうか?
アプリで手軽に読めるチャット小説peep[ピープ]に連載されていた、『マーディスト』という作品が、設定も雰囲気も非常に似ているのです。
今回は、『マーディスト』のあらすじ解説と、『マーディスト』の結末をもとに『インビジブル』の考察もしていきたいと思います。
『マーディスト』あらすじ解説

わずか数年の間に89人を殺害した死刑囚・風見多鶴。
その美しさから、彼女の殺人は芸術として評価され、アーティスト(芸術家)とマーダー(殺人鬼)を掛け合わせた『マーディスト』という呼び名がつく。近年、そんな彼女の模倣犯が急増し、社会問題となっていた。刑務所にいる風見多鶴は、ある人物と話をすることを条件に、模倣犯の情報を引き渡すという。風見多鶴が選んだのは、どこにでもいる大学生の青年だった。
出典:https://peep.jp/
『マーディスト』シーズン1の主人公は、どこにでもいる大学生・夕木音人。
ある日突然、彼の自宅に検察官の野村朝顔さんがやってきて、拘置所に連れて行かれます。
朝顔さんから彼への依頼は、死刑囚・風見多鶴から模倣犯の情報を聞き出すこと。
89人を殺害した死刑囚・風見多鶴は、夕木音人と対話することを条件に、模倣犯の情報を引き渡し逮捕に協力すると言うのです。
そして、風見多鶴と夕木音人とのコミュニケーション手段は、“水平思考ゲーム”。
果たして彼は、うまく情報を聞き出すことができるのか?
そして、なぜ夕木音人は選ばれたのか?風見多鶴の目的は一体何なのか?
多くの謎が複雑に絡み合う新感覚サスペンス。犯罪者のサイコな心理を解き明かす、不思議なヒヤリを体験できます。
『マーディスト』の魅力とは
神格化されるほど美しい犯罪

本作のメインキャラクターは、死刑囚の風見多鶴。
彼女は、89人を殺害してきた殺人鬼(マーダー)であると共に、死体で表現を行う芸術家(アーティスト)でもあります。
死体の四肢を人形のものに付け替えたり、服を着せマネキンのように店頭を飾ったり、死体の肌を薬品で青色にしたりと、彼女にとっては“アート”が大目的で、”殺人”という行為はその手段でしかないのだそう。
彼女の犯すアートは作中で多くの人を魅了し、世の中では彼女の模倣犯が多くの事件を起こし、群衆は「Make Me Art!(私をアートにして!)」運動を通して、風見多鶴に殺されたい気持ちを表現するようになります。
そんな異常な世の中で、無垢な主人公と共に彼女のアートを解き明かすのは、非常に神秘的な気持ちになります。
世間の喧騒から離れて、彼女の不思議な世界に浸ることができるのは、本作の大きな魅力の一つです。
謎を解き明かすための”水平思考ゲーム”

死刑囚の風見多鶴は、模倣犯の情報を引き渡すための条件として、平凡な大学生である夕木音人と話をしたいと言います。
彼らのコミュニケーション手段は“水平思考ゲーム”。
風見多鶴が提供する模倣犯の情報を、夕木音人はYes/Noで答えられる質問をすることで答えを当てなければなりません。
テーマはその時によって様々。「模倣犯の居場所」や「殺害方法」など、風見多鶴が指定するテーマにもヒントが潜んでいます。
この”水平思考ゲーム”も非常によく練られており、サスペンス好きの方にはたまらない魅力となっています。
また、ゲームを重ねるごとに研ぎ澄まされてゆく主人公の成長を見守るのも、本作の醍醐味の一つではないでしょうか。
美しすぎる死刑囚と変化していく主人公

本作の読者を何よりも魅了しているのは、死刑囚と主人公らの魅力的なキャラクターではないでしょうか。
殺人鬼&芸術家という異色のキャラクターを持つ風見多鶴は、死刑囚でありながら非常に美しい姿をしています。
そんな浮世を離れたような彼女のキャラクターは、物語の核となる謎も秘めており、物語が進むにつれ目が離せなくなっていきます。
そんな魅惑的な死刑囚と対話する、夕木音人のキャラクターは対照的です。
彼はどこにでもいる平凡な大学生。殺人現場の写真を見て真っ青になるのも、風見多鶴と面会するのを怖がるのも、いたって普通の男の子です。
しかし、彼は風見多鶴との問答を繰り返すに視野が広がり、物語の最後には風見多鶴をも驚かせるような策士となります。
そんな対照的な2人のキャラクターが、互いに交流し影響を受け合っていく様は、読者を惹きつけて放しません。
また、夕木音人は妹の夕木譜美を溺愛しており、緊迫する死刑囚との問答の合間にはさまれる妹との日常ほのぼのシーンも、かわいらしくて素敵です。
『マーディスト』展開ネタバレ
そんな神秘的な作品『マーディスト』は、どのような結末を迎えるのか?
ここからは、peepで既に完結している『マーディストー死刑囚・風見多鶴ー』のネタバレを紹介していきます。
フィギュアメイカー

夕木音人と風見多鶴のはじまりとなる事件です。
フィギュアメイカーとは、15歳の少女を標的に、彼女らに人形の手足を付け替え殺害する風見多鶴の模倣犯。
「犯人の居場所」をテーマに水平思考ゲームを行いますが、その最中、夕木音人が溺愛する妹がフィギュアメイカーに誘拐されたことが明らかになり、激しく取り乱します。
検察官の野村朝顔の力強い言葉により冷静さを取り戻した夕木音人は、ゲームを続け同室にいた看守が犯人であると突き止めます。
看守が逮捕される前に見せた狂信的なまでの風見多鶴への信仰を目の当たりにし、夕木音人は揺れるのでした。
ディスプレイヤー

次の事件は、19人もの死体をマネキンのように着飾らせ、ファッションショップの店頭に展示したディスプレイヤー。
「死体の展示方法」をテーマに水平思考ゲームを行い、ファッションショップの従業員24人が共謀して犯行を行ったことを突き止めます。
24人もの人間が風見多鶴への信仰心を胸に殺人を犯したことを知り、夕木音人は恐怖します。
マエストロ

殺害した女性をアパートの壁に吊るし、腸を引きずり出し地面に打ち付けたマエストロ。
一度誤認逮捕が行われましたが、風見多鶴との水平思考ゲームにより、真犯人はアパートの大家であったことが明らかになります。
そして、風見多鶴が証拠を見せると言うため、マエストロと風見多鶴をビデオごしに対話させますが、風見多鶴の言葉をきっかけにマエストロは腹を切って自殺してしまいます。
音人は初めて人が死ぬ瞬間を目にしてしまうのでした。
スクランブル・チェア

今回の被害者は4人。交差点の中心で椅子に座らされ、首を切られていたところを発見されます。
水平思考ゲームにより自殺だったことが明らかになりますが、翌週にも同様の自殺が起こり、「催眠」という技術で彼らを自殺に導いた人物にたどり着くのでした。
「催眠」の存在を知った音人は、風見多鶴も「催眠」を習得しており、自分を模倣犯にしようとしているのではないかと疑念を抱くようになります。
セルコネクター

今回の被害者は、頭部・胴体・四肢がそれぞれ6人の体を繋ぎ合わせて構成されていました。
水平思考ゲームのお題は「犯人がどうやって体のパーツを集めたか」。
被害者の体は繋ぎ目が見えないほど精巧に縫合されており、ゲームが進むなかで風見多鶴は「技術者」という協力者の存在を明らかにします。
犯人のセルコネクターは資産家で、犠牲者6人と「技術者」は皆お金で動いたそうです。
これまでの事件は風見多鶴に心酔する人の狂気的な思想が引き起こしてきましたが、「お金」もまた事件を引き起こす力を持つのだと音人は悟るのでした。
アーティフィシャル
今回の被害者は7人。彼らはそれぞれ家族構成や性別、殺害方法などがばらばらで、一見すると共通点が無いようにも見えますが、「同じ町で起きている」点、「月に一度のペースで殺害されている」という点から、風見多鶴は1人の模倣犯による犯行だと確信します。
「犯人はどうやって殺害相手を選別しているか」をテーマに水平思考ゲームを行うと、犯人は人工知能を用いてランダムに被害者や殺害方法を選んでいたことが明らかになります。
カタリスト

カタリストとは、風見多鶴を崇拝する宗教グループ。大物の資産家が背後におり、武器の密輸なども行っています。
いつも通り、音人は水平思考ゲームでカタリストの情報を得ようとしますが、武装したカタリストが拘置所を襲撃し、風見多鶴と音人は連れ去られてしまいます。
しかし、それは模倣犯を逮捕するための風見多鶴の計画でした。
風見多鶴は彼らに連れ去られることで潜伏先を突き止め、警察と機動隊に伝えて一網打尽にしたのです。

- 作者:半田 畔/灰染 せんり
- 出版社:KADOKAWA
- 発売日: 2021年12月24日
アイスマン
殺害した後に死体を凍らせるアイスマン。
風見多鶴は、かつて自分が使用していた”人間冷却装置”を使って、アイスマンは犯行を続けていると話します。
そして、夕木音人と風見多鶴のコミュニケーションは、次のフェーズに入ります。
今回からは“水平思考ゲーム”ではなく”宝探し”です。風見多鶴の指定した場所へ行き、”人間冷却装置”を回収しますが、そこに真犯人の姿はありませんでした。
音人は再び風見多鶴から情報を引き出し、アイスマンの正体は音人の住むアパートの大家だったと突き止めます。
しかし音人らが彼にたどり着いたのは、音人に付きまとっていたジャーナリストを殺害した直後でした。
音人は、自分がジャーナリストのことを風見多鶴に話してしまったせいで、彼が殺されたのだと自責の念に駆られます。
キラー・ビー
次の”宝探し”は、風見多鶴がかつて使っていた「大量の蜂を呼び寄せ人を襲わせる装置」でした。
その場所はかつて風見多鶴が滞在していた海辺のロッジ。しかし、情報を聞きつけた自衛隊もやってきて、装置の奪い合いになってしまいます。
そんななか自衛隊員のミスで装置が起動されてしまい、海辺は大量の蜂で埋め尽くされてしまいます。
車に避難した音人は、「風見多鶴は失踪した自分の姉・夕木琴都ではないか」という仮説を朝顔に打ち明けます。
装置の効果が切れ蜂がいなくなった後、音人と朝顔は自衛隊を出し抜き、装置を海に投げ捨てるのでした。
ブルー
次の”宝探し”は、風見多鶴がかつて使っていた「人間の肌を青く変色させる毒」です。
音人らは風見多鶴がかつて滞在していた民家を訪れますが、家主に出された紅茶に毒が仕込まれており、音人は毒を飲んでしまいます。
すぐに病院に搬送され、唯一解毒方法を知っている風見多鶴の指示通りに治療されていきます。
そんな中、音人は風見多鶴の正体を探るために、彼女と通話し激しく動揺させます。
しかし風見多鶴の方が一枚上手。彼の嘘を見破られ、彼女の正体を掴むには至りませんでした。
技術者

次の”宝探し”は、人体に穴をあけるほど強力な熱線銃。隠し場所であるゲームセンターに向かうも、既に模倣犯に持ち去られた後でした。
そこで出会ったのは、セルコネクターの事件で判明した『技術者』を名乗る少女。警察の追跡を逃れるために、容姿を変えて隠れていたのだそうです。
犯人を追い詰める過程で技術者に出し抜かれ熱線銃を奪われてしまいますが、その夜技術者が音人宅を訪れ熱線銃を返しに来ます。
音人は彼女の「いまや人は、どんな姿にも変えられる」という言葉から、「風見多鶴は失踪した自分の姉・夕木琴都ではないか」という仮説を深めていきます。
しかし、音人と風見多鶴のDNA鑑定の結果、2人に血縁関係が無いことが明らかになるのでした。
夕木音人

DNA鑑定により風見多鶴と音人との間に血縁関係が無いということが明らかになっても、音人は「風見多鶴は自分の姉・夕木琴都ではないか」という仮説を捨てきれません。
そんな彼は、風見多鶴に本当のことを話させるために、彼女の目の前で朝顔を殺害しようとします。
音人を殺人鬼にしたくない風見多鶴は激しく動揺し、遂に彼女の正体が夕木琴都であることを白状します。
彼女は、風見多鶴を愛していました。そのため、彼女を庇うために技術者の協力で整形をし、代わりに自首をしたのです。
ただ、DNA鑑定の結果で彼女と音人に血縁関係が無いということだけが不可解なままです。
その夜音人が帰宅すると、技術者がマンションの前で待っており、「本当のことを話す時が来た」と言います。
風見多鶴
技術者の車に乗り込んだ音人は、キラー・ビーの時に訪れた海辺のロッジへ到着します。
そこの隠し部屋にある装置の中には、もう一人の夕木音人が眠っていました。
それをきっかけに、彼は”風見多鶴”としての記憶を取り戻します。
風見多鶴は89人を殺害した後、愛する夕木琴都が自分の姿をして自首したことを知ります。
死ぬ前にもう一度彼女に会いたかった風見多鶴は、彼女が最期に会いたいと願うであろう人物”夕木音人”になりすまそうと画策します。
技術者の手により音人そっくりに整形をし、自分自身に催眠をかけ、夕木音人として風見多鶴(夕木琴都)に会いに行ったのでした。
マーディスト
風見多鶴としての記憶を取り戻した彼女は、拘置所にいる夕木琴都に会いに行き、彼女に全てを打ち明けます。
お互いの愛と絆を確かめ合った彼女らは、警察にも全てを話し、夕木音人の姿をした風見多鶴は入れ替わるように拘置所に入ります。
それから2か月後に風見多鶴の死刑が執行されますが、模倣犯の犯行は止まりません。
そんな社会を危惧した朝顔は、技術者と協力してテレビをジャックし、風見多鶴からのビデオメッセージを日本全国に流すのでした。

- 作者:半田 畔/灰染 せんり
- 出版社:KADOKAWA
- 発売日: 2022年02月01日
『インビジブル』考察
ここからは、『マーディストー死刑囚・風見多鶴ー』の展開を参考に、ドラマ『インビジブル』について考察していきたいと思います。
まず、『マーディスト』で最も衝撃的だったのは、拘置所にいる風見多鶴が別人だったということですよね。
『インビジブル』の犯罪コーディネーターであるキリコも、本当のインビジブルではない可能性が高いです。
本当のインビジブルだとすると、自らを危険にさらしすぎだとは思うので、ここまでは既に予想できている人が多いのではないでしょうか。
また、数々の凶悪犯を逮捕する手助けをしているところを見ると、『マーディスト』風見多鶴のように自分の罪の贖罪、もしくはインビジブルに恨みを持つかつての協力者あたりが妥当でしょう。
また、『マーディスト』の夕木音人と同様、主人公の志村貴文にも何か秘密があると考えるのが自然だと思われます。
志村貴文もキリコから直接指名されており、拘置所に入る前から目を付けられていた可能性があります。
ただ、音人のような姉弟という説は考えにくいので、3年前の殺人事件の時などに目を付けられていたか、何かしらの関わりがあったと思われます。
もしくは、『マーディストーガード・マンー』の主人公のように、「単純に動かしやすい駒だから」ということも考えられますね。
おわりに
ドラマ『インビジブル』によく似た作品『マーディスト』の紹介と、その展開をもとに『インビジブル』の今後の展開を予想してきましたが、いかがでしたでしょうか。
どちらも非常に素敵な作品ですよね。サイコな犯罪者と共に正義を全うするヒリヒリ感と危うさがたまりません。
ドラマ『インビジブル』がお好きな方は、『マーディスト』もきっと気に入ると思います。
peepアプリなどで無料で読むことができますので、ぜひ試してみてくださいね!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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